空隙歯列(くうげきしれつ)

歯並びの種類

空隙歯列(くうげきしれつ)とは?

いわゆる「すきっ歯」の状態で、歯と歯の間に隙間がある状態空隙歯列(くうげきしれつ)と言います。
前歯2本の真ん中に隙間ができる正中離開(せいちゅうりかい)が多いですが、原因はその隣の2番目の歯がもともと小さな歯(矮小歯:わいしょうし)であったり、2番目の歯が先天的になかったり(先天性欠損:せんてんせいけっそん)など様々な理由が考えられます。

厚生労働省が行う歯科疾患実態調査でも、出っ歯(上顎前突:じょうがくぜんとつ)と同じぐらいの患者数がおり、比較的多くみられる歯並びの状態です。

ただし、乳歯列期の空隙歯列は、これから生え変わる大きな永久歯が生えるための空隙で、正常な顎の発育状態ですのでご注意ください。

空隙歯列(くうげきしれつ)の原因

矮小歯(わいしょうし)

矮小歯とは、本来の歯の大きさよりも小さい歯のことで、歯の形態異常の1つです。歯の形態異常のためエナメル質の量や象牙質の量は問題なく、歯としての機能は問題ありません。しかしながら、矮小歯があると上下の歯の大きさにアンバランスが生じるため、スペースができてしまいます。

矮小歯に対する治療は、①放置する②矯正治療によりスペースを埋める③歯の表面にプラスチックをつけてスペースを埋める(ダイレクトボンディング)④歯の表面にセラミックを貼りつける(ラミネートベニア)⑤セラミッククラウンを被せるなどの治療法がありますので、あらかじめ矯正治療前に矮小歯の治療についても矯正医と相談しておくと良いです。

矮小歯による空隙歯列の例
(引用:第107回歯科医師国家試験 B-8)

矮小歯であっても空隙歯列とならず、スペースが閉じることがあります。この場合には、スペースがある方に歯列全体が傾いてしまい、正中(せいちゅう:真ん中の線)が曲がったり、顎のずれを生じたり違った問題が出てくることがあります。

矮小歯による歯列の乱れ
(引用:第110回歯科医師国家試験 D-3)

過剰歯(かじょうし)

過剰歯とは、その名のとおり過剰に生えた歯のことです。上顎(うわあご)の正中にできる正中過剰歯(せいちゅうかじょうし)が一番多く、埋伏していると正中埋伏過剰歯(せいちゅうまいふくかじょうし)と呼びます。この正中過剰歯により中切歯の間に隙間ができることがあります。

一般的に、正中過剰歯の抜歯は永久歯の交換期に行うことが多いですが、逆に向いて骨の中に埋まっている場合には、抜歯時に骨を削除する量が増えてしまうため、早期に歯を抜いた方が良いケースもあります。ですので、すきっ歯がある場合にはこの正中埋伏過剰歯を疑い、定期的にレントゲンを撮影しながら歯の完成度を確認しておくと良いです。

過剰歯(白色点線)による正中離開の例
(引用:第106回歯科医師国家試験 B-2)

上唇小帯(じょうしんしょうたい)の高位付着(こういふちゃく)

上唇小帯とは、上唇を上に引っ張ると見える線維(スジ)のことです。通常、2歳ぐらいまでは小帯が太く、付着する場所も歯冠側(歯の頭側)に近く、歯と歯の間に入り込んでいることよくあります。成長とともに、上唇小帯は幅が狭くなり、上方に移動していきますが、何らかの原因で移動しないままあるいは移動量が不十分であると、正中離開を引き起こすことがあります。

上唇小帯の付着異常による正中離開は、矯正治療単独で治療することが可能です。場合によっては、上唇小帯の切除という外科処置を行うこともありますので、担当医の先生と相談しながらすすめていきましょう。

上唇小帯の高位付着による正中離開の例
(引用:第109回歯科医師国家試験 C-61)

先天性欠損(せんてんせいけっそん)やう蝕や歯周病による歯の喪失

先天性欠損とは、その名のとおり生まれつき歯がない状態のことです。特に多いのが、2番目(側切歯:そくせっし)、5番目(第二小臼歯)、8番目(親知らず)の歯です。先天的に歯がないことで、上下の歯がアンバランスとなり空隙歯列の状態になります。

先天的に歯がない場合には、歯がない部分のスペースを空けて矯正治療を行い、矯正治療後にインプラントや入れ歯、あるいはダイレクトボンディング、接着ブリッジなど様々な治療により歯の欠損部を埋めます。

う蝕や歯周病などにより歯を喪失した場合には、歯は空いたスペースを閉じようと動き出しますので、いろんな場所に空隙ができたりかみ合わせが変化して、より歯列が乱れやすくなります。

先天性欠損(両側側切歯の欠損)による空隙歯列の例
(引用:第107回歯科医師国家試験 D-21)

舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)

舌突出癖とは、舌を前に出す癖のことです。この癖があると、上顎の前歯部に弱い力が継続して加わるため、前歯が前に傾き、出っ歯になります。著しく前に出た場合には歯と歯の間に隙間ができ、空隙歯列となることがあります。

口呼吸(こうこきゅう)

口呼吸を伴っていると、お口を閉じる筋肉の口輪筋や頬筋が弱くなり、頬や口元がたるみます。また、上下の唇が開いた状態であるために上顎前歯を後ろ抑え込む圧力が減少し、前歯が唇側に押し出されます。この口呼吸が習慣化すると、前歯が唇側に移動し、さらにお口が閉じにくくなるため、出っ歯になってしまいます。出っ歯がひどくなると歯列に空隙ができやすくなります。

下顎の前歯部の突き上げ

かみ合わせが低く、下顎の前歯が上の前歯の裏側を突き上げることによって、前歯全体が唇側に傾斜することがあります。著しく前歯が傾いてしまうと空隙歯列となります。

空隙歯列(くうげきしれつ)の症状と問題点

・歯と歯の間に隙間があると、歯の自浄作用(自然に食べカスが流れ落ちる作用)がなくなるため、磨き残ししやすく、虫歯や歯周病のリスクが上がります

・正中離開があるとその間から息漏れをしやすくなり、「カ行」「サ行」などの発音障害が起き、発音が聞き取りづらくなるため説得力に欠けてしまいます

・歯は隙間を埋めようとしますので、先天的に歯がない場合には、歯が動きかみ合わせが崩れている可能性があります。崩れたかみ合わせにより、顎がずれると顎関節症を引き起こしたり、自律神経系にも問題が出ることがあります

・上顎の前歯が著しく唇側に傾斜している場合には、お口が閉じにくく、見た目の問題のみならず前歯で物が噛みきれないことにより、消化器官に負担がかかってしまいます

・すきっ歯をコンプレックスに感じている方も多く、思いっきり笑えないなど私生活に影響がでることがあります

まとめ

乳歯列期(にゅうしれつき)の空隙歯列は正常ですので、治療の必要性はありません。永久歯に変わってからの空隙歯列は、様々な原因が考えられます。単なるすきっ歯といっても、先天的に歯がない先天性欠損や歯を失った場合には、歯列全体が傾いたりして治療自体が複雑になることがあります。すきっ歯になっている方は、一度原因追求のため歯科医院に相談に行かれることをお勧めします。

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